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第5章 全部あげたい(3)
軽井沢から千歳のマンションに帰った唯は、すぐそばに千歳がいるのにずっと物足りない気持ちでいた。
唯が夕飯を作ろうとすれば、今はお客様だからとデリバリーを頼まれてしまうし、夜はしっかりと別々の部屋で眠った。朝、目を覚ませば千歳はすでに出勤していて一人ぼっちの朝食を食べることになった。
千歳のことだ。半分くらいは楽しんでいるに違いない。唯が寂しそうに見つめると、眉尻を下げつつも嬉しそうに微笑んでいた。酷い。
けれど、一人で眠ったおかげで唯の体はかなり回復していた。恋人関係のままだったら、こうはいかなかったかもしれない。そういった事情がすこしは含まれているのだろうかと唯は思うが、千歳が楽しんでいるように見えるのは事実である。
正式に恋人になる前からものすごく翻弄されている唯は、すぐに病院に行くことにした。
祝・処女喪失だというのに彼女の頭は千歳のことでいっぱいである。
(たぶん、検査しても問題はないと思うけど……)
それでも唯はあまり例のないタイプだ。
もしものことを考え、診てもらった方がいい。
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