第5章 全部あげたい(3)

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 唯は途端に難易度が上がったような気がした。けれど、この大事な日に妥協をするわけにもいかず、スマホで調べながら料理を作ることする。食材なら豊富にあるのだ。とくに魚が多い。捌き方は小学生の頃に、夏休みの間だけ祖母の家で生活していた際に教えてもらっていたのでどうにかなる。  こうして唯は鮭のホイル焼きや具をたっぷりと入れた味噌汁にカボチャの煮付け、紅白なます、大根のそぼろあんかけ、厚揚げの生姜焼きなど、何品も作った。終わった頃にはやりきった感に溢れている。  時計を確認すると、そろそろ千歳が帰ってくる時間だ。お皿に盛り付けるのは、帰ってきてからの方がいいだろう。  唯は自室に戻り化粧が崩れていないか確認する。すっぴんなんて何度も見られているが、この時ばかりはきちんとした格好で話したいのだ。机の引き出しからネックレスを取り出し、身に着ける。この時のために大事にしまっておいたのだ。 「き、緊張する……」
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