第5章 全部あげたい(3)

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 うまく告白できるだろうか。順番としてはまず病院での出来事を話すべきだろう。検査の結果は問題なかった。もしかすると、数日後に熱が出るかもしれないと聞いたけれど、あれだけやったのだから大丈夫なはずだ。分からない。頭がぐるぐるしてきたと、唯はメモ用紙を取り出す。まずは実際に書いてみようかと試みるが、様々な羞恥が巡って余計に頭が動かなくなる。  その時、玄関先で物音がした唯は慌てて部屋を出た。 「おかえりなさい」 「……ただいま」  わざわざ玄関前まで迎えに来た唯に、千歳は目を瞬いた後、嬉しそうに破顔する。まだ恋人ではないのに甘い雰囲気が漂っていた。けれど唯はそのことに気づけないほど、ガチガチに緊張している。 「今日は休ませてもらってありがとうございました」 「俺が休んで欲しいって思っただけですよ」 「でも、すごく体が楽になったので……」  この分なら明日からいつも通りに動けそうだと唯はほっとしていた。それくらい凄まじい疲労と筋肉痛だったのだ。社会人になってからはデスクワークばかりで、運動することを意識していないせいでもある。今後は適度な運動を心がけようと胸に誓った。
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