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「それで、あの……夕飯はできているので、食べられるように用意しますね」
「手伝います」
唯は焦って本題を口にしそうになるのを耐える。玄関先で話すことではないだろう。
「今日はご馳走ですね」
台所に立った千歳は口元を緩める。
「は、はい……頑張りました」
深い意味はないだろうに、唯はその一言だけでしゃがみ込みたくなるほど顔が赤くなっていた。こんな調子で告白ができるのか。
どうにかお皿に作った料理を盛り付け、テーブルに並べる。
「唯、顔が真っ赤になっているけど大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
唯は赤らんだ頬を手で押さえつける。
(あ、あれ……変……? なかなか引かない……)
千歳は唯をからかっているわけではなかった。心配した様子で彼女に近寄る。
「え、えと……」
まさか、そんなはずがないと唯は千歳から離れようとしたが、あっさりと腰を掴まれて額に触れられてしまった。
(嘘……)
ただ照れているせいだと思っていた唯は、その熱がなかなか引いてくれないことに気づく。ただ体が熱いだけでなく、千歳のマンションに住む前に感じた倦怠感に襲われていた。
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