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「でも、仕事が忙しかったら言ってください。そのせいで月野さんが過労で倒れてしまったら、申し訳ないです。結婚の準備で忙しくなることもあるでしょう」
「い、いえ、結婚をするのは止めたの……で……、あ……」
必要のないことを言ってしまったと、口元に手を当てる。
けれど言ってしまったことを取り消すことはできない。
千歳の耳にはしっかりと届いていた。その証拠に、のんびりとした表情を消し去っている。
「言い辛い話でしたね。もしかして理由は仕事のせいですか? 最近は休日出勤が多かったので」
「気にしないでください。仕事のせいではないですよ」
「なら――気晴らしに、ご飯でも食べに行きませんか」
「ご飯ですか」
秘書になってからは二人でよくご飯を食べることがあった。とはいえ、ご飯中の会話は仕事の話がほとんどだ。仕事を円滑に運ぶための会食に近い。食事中にお酒を飲んでも一杯までという、とても健全な食事会だ。
それでも唯に恋人ができてからは一度も二人きりで食事をしたことはない。
(上司運には恵まれたのに、恋人運には恵まれなかったなあ)
「いいんですか?」
「是非」
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