第5章 全部あげたい(4)

6/7

235人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ
「ご飯はここで食べましょうか。用意してきますね」  千歳は唯の頬に軽くキスをすると、部屋を出て行った。流れるように行われたスキンシップに、唯はこんな調子ではなかなか熱が引かないと唸った。 「じゃあ、唯。あーんしましょうか」 「いえ、もう食べられますから」  ベッドから起き上がれるほどに回復した唯は、今回ばかりは千歳の申し出を断った。  今は恋人になったばかりである。  本来であれば、唯は千歳に尽くそうと計画していたのだ。それなのに、逆に尽くされている。こんなつもりではなかったのに、と温めなおしてもらった料理を口に運ぶ。  食べさせたがっていた千歳は、断られた後はあっさりと引いて「美味しいですね」と言いながら椅子を置いて座って食べていた。  そうしてとりとめもない話をしながら、夕飯を食べ終える。  ご飯を食べた唯は、体に残っていた倦怠感がすっかり消え去ったので、千歳に促され先にお風呂へ入ることにした。熱が出た際に、全身が薄らと汗をかいていたので、すぐにでも清めたかったのでちょうどいい。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

235人が本棚に入れています
本棚に追加