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ようやく恋人になれたのだ。ベッドで横になった状態での告白になってしまったが、夜はきちんとしようと唯は今度こそはと決意する。
脱衣所で服を脱ぎ、浴室に向かう途中――唯が入ってきた方の扉が開く音がした。
「唯、手伝います」
「てつだ……? へ」
「だめでしたか?」
「だめというか……えと、あの」
何を手伝うというのか。
突然入ってきた千歳に、唯は頭が真っ白になる。落ち着いて考えれば、彼の言っている意味も分かるだろうに立てたばかりの計画が崩れていく音に冷静さが悲鳴を上げていた。
「さっき、熱を出したばかりじゃないですか。風邪ではないですけど、お風呂に入っている間に何かあるかもしれないでしょう?」
「たぶん、大丈夫だと思うんですけど」
「俺が心配なんです」
ね、と慈愛に満ちた表情で首を傾ける仕草に、唯は頷く以外に道がなかった。
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