第5章 全部あげたい(5)

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 それ以外の選択肢はない。一応、疲れているならと気を遣ったらしい千歳の質問は、唯にとっては意地悪だ。なのに、唯の返答を聞いた彼はふわりと嬉しそうに笑みを零すので、彼女はすぐに許してしまう。 「唯も明日は会社に行きたいだろうし、あまり疲れるようなことはしないようにしますね」 「千歳さんは疲れたりしなかったんですか?」  ほとんど彼が動いていたことを唯は思い出す。何故、こちらの方が動けないくらい疲れてしまうのか分からなかった。 「疲れたって言ったら、唯がしてくれるんですか」  だったら疲れたって今度言ってみようかなどと呟く千歳に、彼女は質問の内容も忘れて固まった。 「えっ、し……」  千歳は、唯が想像して赤面し慌てふためく姿をしっかりと視界に収め満足する。どうやらその辺はまだまだ先にお願いした方が良さそうだ。しばらくはのんびりとした営みになりそうだと、唯をベッドの中に閉じ込める。部屋の照明を暗くして、期待するような目で見てくる唯の望みを叶えることにした。
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