第1章 副社長と契約恋愛(2)

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 唯にとって、千歳と一緒に食事をすることは苦ではない。むしろ、毎回美味しいお店でご馳走してもらっている。聞き上手でもあるので、女友達よりも話しやすい時さえあった。踏み込んで欲しくない部分を無理に踏み込んで来ない安心感があるのだ。  彼が女性であれば、唯は全力で好意を向けていただろう。……実際は男性なので、誤解されるようなことは避けるが。  予定していない飲み会だったが、千歳はすぐにお店の案を出した。一人では入れないような高級料理店から、気軽に入れてのんびりできる居酒屋まで候補は幾つかある。  唯が選んだのは居酒屋だった。最近は家事をする暇がなく、ご飯も適当に済ませていた。そんな時に高級料理を食べても味が分からないだろう。  居酒屋の場所は、会社と唯の家のちょうど間にある。カフェが多い通りにあるので、居酒屋とはいえ店内は若い男女や女性客が多かった。その中に、副社長と秘書というカップルでも何でもない男女が入るのは場違い感がある。  しかし、客の方はそんな事情など知らない。新たに入って来た千歳に興味津々だった。主に、彼の顔に。 (すごい、見られてる……)
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