エピローグ

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 千歳と付き合うようになってから、唯の見た目は劇的に変わったわけではない。化粧も髪型も、言われたら分かる人には分かる程度の変化だ。それでも千歳は口紅を変えていれば「可愛い」と伝えるし、髪をセットした時に使ったヘアオイルが変われば、香りが好きだとか触りたくなるだとか話していた。すぐに気づいて可愛い可愛いと甘やかしてくる千歳のおかげで、唯は照れながらも自分磨きをちょっとずつ頑張っていった。  話しかけられるようになったのは、表情のおかげだろう。以前は仕事ばかりで、会社ではほとんど表情が変わることがなかった。それが千歳と恋人になってからは驚かされることが多く、自然と表情が変わることが多い。鍛えられた表情筋により、雰囲気も柔らかくなっている。 「じゃあ、助けないのは? わざわざ恋人だって言わなくても、間に入る口実はいくらでもあるだろ」 「俺が何でも助けていたら、嫌かなって」 「恋人になら嬉しいんじゃないのか」 「唯は俺の後ろじゃなくて隣にいたいみたいで。だから、一人でできることは見守ります。さすがに無理強いするような人だったら、俺も間に入りますけど……あ」
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