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男性社員二人を見ていた唯が、ちらりと廊下を見る。たまたま顔がそちらを向いただけなのだが、千歳とばったり目が合った。
千歳はとても嬉しそうに見つめるのとは対照的に、唯はやや真っ青になりながら会話が聞こえなくとも分かるほど全力で断っている。
「良かった。ちゃんと断れたみたいです。これからもっと可愛くなるだろうし、安全な場所で経験が積めるのはいいことですよね」
そこには何ら毒はない。唯のためになったことを心底喜んでいる姿しかなかった。
「とられるとか、思わないんだな」
「男性一人が近づいただけで余裕がなくなるような落とし方はしてないので」
束縛しなければ、愛し合えない関係なんていらない。
欲しいのは、不安のない強固な関係だった。
「でも、見限られないように努力はしたいから、後で甘えようかな」
達也は何か言おうとして口を閉じかけたが、いやもういいとばかりに脱力しながら呟いた。
「無害な男性社員を練習台にした挙げ句、いちゃいちゃする口実にしやがった……」
「そんな、いちゃいちゃだなんて」
「恋でもすれば、すこしは丸くなるんじゃないかって思ったんだが全然変わってないな」
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