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僕の初恋
時が流れ、僕は高校1年生。兄さんは社会人で、今では彼女と同棲している。
兄さんは、あれから血の滲むような努力をしたわけでもなく、相変わらず好みの女の子を見つけては告白し、玉砕した。
そんな兄さんになぜ彼女が出来て、同棲までこぎつけたか? これはほとんど僕のおかげと言ってもいい。
中学生になると、スマホが与えられた。SNSやチャットで様々な人と交流し、兄さんの話と、僕が考えた、兄さんがフラれる原因を彼らに話したり、質問アプリに投稿したりした。
結果、僕が思っていたことはほぼ当たり。フラれた回数3桁、彼女いない歴=年齢の兄さんに、ネットで得た情報を織り交ぜながら、アドバイスをしてみた。
1ヶ月でデートする相手が見つかり、3ヶ月で恋人になり、今では同棲しているというわけだ。
僕自身に好きな人が出来ていないため、自分では結果を出せていないが、これは大きな自信に繋がった。
高校生活に慣れ、少し蒸し暑くなってきた季節。はじめての席替えが行われた。狭く深い友情を築く派の僕は、近くの席にいて仲良くなったふたりと遠い席になってしまった。
真ん中の前から3番目。ここが僕の席。友人ふたりは、一番後ろの廊下側に並んでいる。僕だけ仲間外れにされたみたいで、気分が悪い。
これだけならまだいい。1番の問題は……。
「もー、カレンと離れ離れとか最悪ー!」
「よっしゃ! 沢田さんの隣!」
後ろの席が、騒がしい。
僕の後ろにいるのは、沢田カレン。背中まで伸びたご自慢の黒髪は、かなりの額をつぎ込んでいそう。背が高くて、モデル並みに美人。おまけに勉強も運動もできるスーパーガール。
皆彼女をチヤホヤするが、僕はこの手の人間が苦手だ。完璧すぎて気持ち悪い。
あまりにもうるさくて注意しようと振り返ると、彼女は僕の目を見てにっこり笑った。
「あ、ごめんね? うるさかった?」
申し訳無さそうに眉を下げながらも、笑顔は絶やさない。こういうところが苦手だ。
不快感で前を向くと、「お、照れてるー」と野次が飛んでくる。めんどくさい。
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