僕の初恋

1/4
前へ
/10ページ
次へ

僕の初恋

 時が流れ、僕は高校1年生。兄さんは社会人で、今では彼女と同棲している。  兄さんは、あれから血の滲むような努力をしたわけでもなく、相変わらず好みの女の子を見つけては告白し、玉砕した。  そんな兄さんになぜ彼女が出来て、同棲までこぎつけたか? これはほとんど僕のおかげと言ってもいい。  中学生になると、スマホが与えられた。SNSやチャットで様々な人と交流し、兄さんの話と、僕が考えた、兄さんがフラれる原因を彼らに話したり、質問アプリに投稿したりした。  結果、僕が思っていたことはほぼ当たり。フラれた回数3桁、彼女いない歴=年齢の兄さんに、ネットで得た情報を織り交ぜながら、アドバイスをしてみた。  1ヶ月でデートする相手が見つかり、3ヶ月で恋人になり、今では同棲しているというわけだ。  僕自身に好きな人が出来ていないため、自分では結果を出せていないが、これは大きな自信に繋がった。  高校生活に慣れ、少し蒸し暑くなってきた季節。はじめての席替えが行われた。狭く深い友情を築く派の僕は、近くの席にいて仲良くなったふたりと遠い席になってしまった。  真ん中の前から3番目。ここが僕の席。友人ふたりは、一番後ろの廊下側に並んでいる。僕だけ仲間外れにされたみたいで、気分が悪い。  これだけならまだいい。1番の問題は……。 「もー、カレンと離れ離れとか最悪ー!」 「よっしゃ! 沢田さんの隣!」  後ろの席が、騒がしい。  僕の後ろにいるのは、沢田カレン。背中まで伸びたご自慢の黒髪は、かなりの額をつぎ込んでいそう。背が高くて、モデル並みに美人。おまけに勉強も運動もできるスーパーガール。  皆彼女をチヤホヤするが、僕はこの手の人間が苦手だ。完璧すぎて気持ち悪い。  あまりにもうるさくて注意しようと振り返ると、彼女は僕の目を見てにっこり笑った。 「あ、ごめんね? うるさかった?」  申し訳無さそうに眉を下げながらも、笑顔は絶やさない。こういうところが苦手だ。  不快感で前を向くと、「お、照れてるー」と野次が飛んでくる。めんどくさい。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加