恋の反面教師

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恋の反面教師

「守ぅ~、聞いてくれよ~」  宿題が終わり、ようやく一息つけると思った矢先に、邪魔が入った。 「今度はどんな振られ方したの?」 「よくぞ聞いてくれた! カスミちゃん、酷いんだぜ? あんなに色々買ってあげたのに、『(みのる)くんと付き合うのはなんか違うかな』ってよぉ!」  椅子に座り、兄の頭を撫でる小学6年生の僕。そんな僕の膝の上で、大声を上げてみっともなく泣きじゃくる高校1年生の兄。  これが僕らの日常の一部なんだから、嫌になる。  兄さんは女たらしだ。けど、上手な女たらしじゃない。下心見え見えの笑顔で女の子に近づき、鼻の下を伸ばして話しかけ、気持ち悪がられて逃げられる。  物心がつく頃から、兄さんが女の子に振られたという話を聞き続けている。何も分からなかった頃は、ひどい女の子たちがいるものだと思った。  兄さんは面倒見が良くて、僕にとってはいいお兄ちゃんだったから。  けど、ある程度良い悪いの分別がつくようになってからは、女の子たちに同情する。 「女なんて……女なんてえぇぇぇっ!!!」  絶叫し、ファンタを一気飲みする兄さん。ちなみに500mlじゃなく、2Lのやつだ。 「いっつもそう! いっつも俺ばっかり本気になって! いっつも向こうは遊びなんだよぉ!」  絡み酒ならぬ、絡みファンタ。この上なくめんどくさい。こうなった兄さんは、ファンタを飲み干すまでこの状態が続く。  面倒ではあるけど、悪いことばかりじゃない。下の子というのは、上の子の失敗を見て学ぶ。僕は兄さんを恋愛の反面教師として見ている。  小学6年生ともなると、気になる女子のひとりやふたり、できてもおかしくない。僕はまだいないけど、友達の中に、好きな女子がいる人もいる。  今のところ、 ・いきなり告白しない。 ・馴れ馴れしくちゃん付けで呼んではいけない。(少なくとも高校生はそうらしい) ・ニヤけない。  この3点を学んだ。ここに、「・貢ぎすぎはよくない」というのが追加されようとしている。
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