1 救世主はメロンパン

1/12
前へ
/22ページ
次へ

1 救世主はメロンパン

どこからか聞こえてくる、チチチ、というさえずり。 その音につられたからか、瞳がうっすら開く。 視界には畳が映り、まだ少し残るイグサの香りが鼻をつく。うつらうつらと顔を上げれば、カーテンの隙間から差し込む日差しがキラキラと輝いていた。 麻央(まお)は布団から出て、その光のもとに向かった。カーテンを引いて窓を開け、身を乗り出す。 外には大量の木々が並んでいる。道向かいには誰かが植えた沈丁花が花をつけていた。 目を閉じて朝の空気を胸いっぱいに吸い込み、麻央は思いのままつぶやいた。 「焼きたてパンが食べたいぃぃ……」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加