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「お疲れ様」
「ほんっとに疲れました……」
「あの子らパワフルだからなぁ。でも、みんなうれしそうにしてたよ。ありがとうな」
「まぁ、私も楽しかったから来て良かったです」
「それは良かった」
麻央は額に乗せていた腕をどけ、目を開ける。すると楽しげに覗く間宮と真正面から目が合った。
気まずさに麻央は、視線をさまよわせ、疲弊する体を慌てて起こした。
「どうした?」
「いえ、別に……」
「そ? じゃ、帰ろっか」
間宮は近くに置いていたコンテナを抱え、車へ戻っていく。途中で振り返り、「ほら、行くよ」と呼びかけられる。
麻央は立ち上がり、彼の姿を追いかけた。
助手席に乗り込みシートベルトを付けると、トランクに荷物を乗せた間宮も乗り込んでくる。
「良かったら、この後買い出ししていく?」
間宮はシートベルトを装着しつつ問いかける。その提案に麻央は思わず笑顔で間宮のほうへ顔を向ける。
「いいんですか!? 助かります。今日こそは買い物しないとと思ってましたから」
「でないと、また俺の家に物乞いに来ないといけないもんな」
間宮はまたこうやっていじってくる。
麻央は目を細め、じとっと間宮を睨みつけた。
「そうですね。また体で支払わないといけなくなっちゃう」
「はは。ホントそれな」
笑い事じゃないけど?と思いながら、笑う間宮を見て、麻央も口もとを緩めた。
「どこの店がいいとかある?」
「どこでも大丈夫ですよ。というか、あんまり詳しくないんです。いつもは駅のバス停で降りて、近くのスーパーに行っちゃうので、他のお店には行ったことがなくて」
「そう。じゃ、今日は別のところに行ってみようか」
彼はエンジンをかけ、車を発進させた。
窓の外を見ると、子どもたちが施設の窓を開け、そこから顔を出して手を振る姿が見えた。
麻央も窓を下ろし、よく見えるように大きく手を振る。
「お姉ちゃん、またねー!」
「うん! また遊ぼうね!」
子どもたちは、車の姿が見えなくなるまで、手を振ってくれていた。
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