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月ヶ瀬菜乃花、悪役令嬢に転生してしまった!
世の中には勝ち組と負け組がいる。
そして私は――確実に後者だ。
特技なし。美人でもなし。
むしろ“美しくない側の人間”。
だから私は、手に職をつけるべく簿記の専門学校に通い、経理部に就職した。
朝九時から夜九時まで残業、土日は惰眠。
恋愛?
「そんな余裕あると思う?」ってやつだ。
でも私は知っている。
現実がモノクロでも、乙女ゲームの世界はフルカラーだってことを。
そんな私の推しは――攻略対象じゃない。
モブキャラだ。
ゲーム仲間からは「モブ妻」と呼ばれている。
はい、最高の褒め言葉です。
ある日、運命の出会いが訪れた。
人気声優だらけの乙女ゲーム
『花の聖女と伝説の剣(フラソ)』
そこで私は、恋に落ちた。
――チュートリアルに一瞬だけ出てくる
「魔法学園の先輩」に。
黒髪タレ目メガネ。冷静で知的。
完璧。
なのに――
声は「ポポポポ」
いや、なんでだよ。
それでも私は彼に心を奪われた。
「私が攻略したいのは先輩なのよぉぉぉ!!」
ヒロインを助けて死ぬルートでは発狂し、
運営に「声をつけてください!」と一年間送り続けた。
そして、ついにその日が来る。
【全ルート最速クリア者の願いを叶える】
――神イベント。
私は寝る間も惜しみ、親指を酷使し、
一番乗りで全ルートを制覇した。
『願い事を入力してください』
「うおおおおおお!!」
『魔法学園の先輩に、声を当ててください!!』
――人生で一番幸せな瞬間だった。
(次の瞬間、死んだけど)
気がつくと、ふわふわした空間にいた。
「……あれ?きみ、もう死んじゃったの?」
振り向くと、白い羽の天使。
「お前か! 私を殺したのは!!」
「違うって! 本当ならあと一か月は生きてたよ」
「じゃあ戻せ!!」
「でもどうせ推しの声聞いて血管切れるよ?」
「聞いてから死ぬのと聞けずに死ぬのは違うのよ!!」
天使はため息をついた。
「じゃあ――ゲームの世界に転生させてあげる」
「……は?」
「魔法学園の先輩の“生声”が聞けるかもよ?」
思考停止。
「子供時代とか見てみたくない?」
(ショタ先輩……だと!?)
「行く!!!!」
――そして。
「お嬢様、いつまで寝ていらっしゃるのですか!」
目を開けると、豪華な天蓋付きベッド。
小さな手。鏡の中の自分は――
ブロンド、アメジストの瞳の美少女(5歳)。
「なんで今なの~~~!!!」
推しの声を聞く前に――
私は、悪役令嬢フレイアに転生していた。

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