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私…誘拐された?!
時は少し前に遡り・・・友人と観劇に行った帰りだった。
馬車が大きな揺れと共に急停車をした。その衝撃でバランスを崩したカティの身体を一緒に居た執事が抱き留めた。
何が起きたのか、馬車の先頭に座る御者に確認をしたが返事が返ってこない・・・。
「カティお嬢様。状況を確認してまいりますので、絶対に馬車から・・・」
執事が外に出ようとした瞬間、馬車のドアが勢いよく開きガラの悪い連中が乗り込んできた。
「お貴族様の馬車が通ったから止めてみたが・・・、なんだよチビと男しかいねーじゃねぇか!!!」
ひと際大きな身体をしたスキンヘッドの男が声を荒げて怒鳴り始めた。
馬車の中を一通り見渡して、2人しかいないことを確認した大男は手下に指示をした。
「とりあえず、この2人を連れ出せ!逃げられないように拘束しろよ!!」
そう指示を受けた手下達はロープで2人の手首と足首を縛り上げ、口には布を噛ませ自分達が乗っていたお世辞にも綺麗とは言えない馬車に連れ込んだ。
どのくらい時間が経ったか・・・ガタガタと大きく車体を揺らし舗装されていない道を進んでいく。
カティは状況把握しようとしたが、いつも乗っている馬車とは違い力に集中ができない。
車体の揺れによって、お尻が悲鳴を上げようとしていた頃に馬の鳴き声と共に馬車が止まった。奴らの根城に着いたようだ。
再び身体を抱えられ、地面に乱暴に降ろされる。
目の前の建物は、かつては栄えていたであろう大きな館だ。今は廃墟と化し、まるでお化け屋敷のような見た目をしている。
「おい!男は拘束を外して身ぐるみ剥いで放り出せ!男は売れもしねぇし、使い物にならねぇ!」
大男はそう叫び、先に館の中へ入っていく・・・。
カティが連れていかれた部屋は、薄暗く埃っぽい部屋だった。
朽ち果ててはいるが、広さや置かれている家具を視る限り応接室だと思われる。
荒っぽい扱いを受けたカティは内心かなり怯えているものの、公爵家の娘として気丈に振舞おうとしていた。
(落ち着いて・・・状況を整理するのよ・・・。)
(おそらくこの方達は私が誰かなんていうことは知らなさそう・・・。ということは、お父様を失脚させたいという訳ではないのね。)
ラングレイ公爵家は、この国に存在する5大公爵家の1つである。
5つの家門は代々続いてきており、ここ50年は入れ替わりがない。
だが、現代でも公爵の爵位を欲している者は少なくない。そういった感情を持っている者はあらゆる手段で何れかの家門が失脚することを望んでいる。
(放り出されたあの執事が屋敷に着くには何日掛かるかしら・・・。そもそも、助けを求めに行くかも怪しいわ。)
(となると、私は自力でここから脱出することを考えなくては・・・。)
カティは三女と言えど、甘やかして育てられた訳ではない。
このような事態に備えて、ラングレイ家では護身術や縄抜けなどの技術を叩き込む風習がある。(他の公爵家も同じとは言えないが・・・。)
しかし、いきなり縄抜けをして脱出するには危険過ぎる。
もう少しこの建物内にいる人間が手薄になるタイミングを狙わなくては・・・。
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