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カティは怯える振りをしながら身体を縮こませ、感覚を耳に集中させた。
すると、別の部屋で頭領とそれ以外の会話が聴こえてきた。
聴こえてきた内容を要約すると、盗賊達はカティを殺す目的はないようで、人買いに売り飛ばそうという算段らしい。
その為、衰弱されると困るから食料は与えてやれ、とのこと。
正直、食料が貰えるのはありがたい。脱出するにしても、空腹状態では気力も起きなくなってしまう。
一安心したカティは、一旦耳に集中することをやめた。
すると、ドカドカと響く足音が近づいてくることに気付いた。
「おい!メシだ!」
勢いよく開けられたドアには、片手に食事を持った男が居た。
男は、近くにあった朽ちたテーブルに食事を置き、ドアの近くにある椅子に座ってカティを見張っている。
しかし、カティは食事に手を付けない。その様子を訝し気に睨んでいる。
「なんで食わねぇんだ?変なものは入ってないぞ!」
「なんでって・・・手縛られているもの・・・。食べたいけど食べられない・・・。」
潤んだ瞳で男を見ると、ポカンと口を開けていたがすぐに正気を取り戻し、呆れた様子で近寄ってきた。
「仕方ねぇ。今だけ外してやる。その代わり急いで食えよ!俺だって暇じゃねぇんだ!」
そう言って、カティの手を縛っていたロープを外す。
(あら、あっさりと外してくれるのね。でも、脱出するにはまだ早いわ・・・。)
脱出する計画を考えながら食事に手を付ける。
屋敷で出てくる食事と比べたらかなり質素な食事ではあるが、お腹を満たすには十分の量があった。
「ご馳走様でした。」
「よし、全部食ったな。そしたら縛り直すから腕を出せ。」
おとなしく両手首を合わせて身体の前に出す。ここで無理に逆らっても面倒くさい。
男はカティの手首を拘束すると食器を持って部屋を出ていった。
1人残されたカティは、やることもないのでソファらしき家具を背もたれにして目を瞑った。
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