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「んぅ・・・・。」
夜が明け、太陽の光が大きな窓から差し込む。カーテンは掛かっているが、例に漏れずボロボロになっている為、役割を果たしていない。
もう少し眠っていたい気持ちもあったが、日差しが暴力的に二度寝を阻んでくる。
カティの周りは昨夜と変わらず、朽ちた家具と埃っぽい床。だが、昨夜のうちに分かったことがある。
それは、基本的に鍵が掛かっていないこと。
ふと、夜中に目が覚めてしまい、すぐに眠り直すことが出来なかったから部屋の中を歩き回っていた。
幼いからと言って油断しているのか、元々不用心なのかは分からない。けれど、完全に抜け出し放題なのだ。
いっそのこと、昨夜の内に脱出してしまおうかとも考えたが、何でか分からないが流石に気が引けたので、再び眠りにつくことにした。
そうして、朝を迎えたのだが・・・
「よう!飯を持ってきたぜ!!!」
昨夜、食事を持ってきた男が満面の笑みで部屋に入ってきた。
「しっかり食えよ?でないと、でっかくなれねぇんだからな!」
(・・・この方、私が捕らえられてるということを分かっているのでしょうか・・・?)
人攫いにあったカティだが、思っていたよりも待遇が良く、なんとも言い難い気持ちになりながら食事を続けていた。
難しい顔をしながら食事をしているカティを見ながら、男は呟く。
「なぁ、嬢ちゃん。お前さん、ここから逃げたいか?」
唐突な質問にカティは目をパチクリとさせた。
逃げられるのならそうしたい。人買いに売られた後、どうなるかを想像したら悪寒が走る。
話しに聞くだけで実際に見たことはないが、人買いに売られた子供たちは闇オークションにかけられ売られてしまう。
売られた後の待遇は買った人間によりけりだ。
コレクションのように扱われるか、奴隷として虐げられるか、はたまた・・・。
そのような状況には絶対になりたくない。そう心に決めたカティは言葉を返す。
「もちろん逃げたいですわ。」
はっきりと、強い眼差しを男に向けてそう告げる。
その目をしっかりと見た男は立ち上がり、カティに耳打ちをする。
「よし、分かった。そうなりゃ計画を立てないとな。」
「あの・・・貴方はそれでよろしいのですか?私を売り飛ばす話をしていたのでは・・・?」
「なんだよ、聞こえてたのか。そうだな、お頭はお前を人買いに売って大儲けしようとしている。」
「だがな、俺は・・・自分の娘と同じくらいのお前さんを売り飛ばすなんて気が引けちまうんだ。」
男は苦し気な表情をしながら俯く。
「盗賊としては甘っちょろい事を言ってるかもしれねぇ。だが、それが俺の信念だ!」
「・・・立派なお父様なのですね。」
そう言ってカティは微笑み、男は少し照れ臭そうにして笑う。
男は『ダグ』と名乗り、今夜の見張り当番の情報をカティに教えた。
「お前さんがいるこの部屋は1階にある。だから窓から出たとしても怪我はしねぇ。窓から降りたら、右側に進め。そうしたら館の正面じゃなくて裏口に出る。そこからは真っ直ぐ森に向かって進め。」
「正面ではなくて裏口に向かうんですの?」
「正面は2人の見張りがいるし、お頭がお前を売り飛ばす為に街に出ている。その帰りと鉢合わせしたらお終いだ。」
「分かりましたわ。裏口は開いているのかしら?」
「裏口の門は錆びて動かない状態になっていて、開きっ放しになっているから問題ないだろう。」
それは好都合。朽ちた館も捨てたもんじゃないとカティは心の中で思う。
正直、カティの視力で夜に行動するのは厳しいところがあるが、道順も教えてもらったし何とかなるだろう。
見張り当番は、外の門に2人、正面玄関に2人、裏門に1人。カティの扉の前に1人。という状態らしい。
時計の鐘が12回鳴った所で見張りが交代する為、一瞬だけ手薄になる瞬間がある。
部屋の窓の鍵を予め開けておき、鐘の音が鳴り終わったら裏口に向かう計画でカティとダグは準備を進めていった。
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