5人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
光る大木の前で意識を手放したカティが目を覚ましたのは、太陽が頂点に昇った頃だった。
目を覚ましたカティの前に居たのは、鹿だった。
「わっ!!!!!!!!」
思いがけない目の前の状況に、淑女の欠片も無い声が出た。
その声に気付いた鹿が目を開いた。
「目が覚めたか。『主』はこの精霊の木魔力にあてられて気を失ったらしい。」
人語を話す鹿を目の当たりにして、カティは固まった。
「(鹿が喋った・・・。いや、それもだけれど精霊の木?魔力?)」
情報量がありすぎて眩暈がする。
魔力は分かる。この世界には精霊の力を借りて魔法を使うことができる。
魔法を使うには15歳の成人の儀の際に精霊と契約を結ぶ儀式を行う必要があり、この国の義務でもある。
ただ、精霊の木というのは初めて聞いた。
「精霊の木というのは、この木のことよね・・・。なんの精霊が宿っているの?」
「この精霊の木は光の精霊が宿っている。もう数百年この地を守ってきている。」
「光の精霊?!本当に存在しているの?」
光の精霊はこの世界の最上の高位精霊とされており、伝説級と言われている。
伝説級と言われているだけあり、現在契約している人間はいない・・・はず。
そんな夢幻と思われている光の精霊がここにいるというなんて・・・信じられるはずもない。
「君はまだ成人の儀を終えていないから、精霊の魔力が強すぎて耐えられなかったのだろう。」
「確かに私はまだ成人の儀は行っていないわ。でも、そんなこと分かるの・・・?」
「まとっている魔力で分かる。君の魔力はまだ何物にも染まっていないからな。」
カティは、まとっている魔力と言われて自分の手のひらをまじまじと見たが、特にこれといって何も感じない。
最初のコメントを投稿しよう!