時を越えて

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今日も時報がきこえてくる。悲鳴が混じったサイレンがきこえてくる。 曾祖父の、泣き声が、きこえてくる。 なくしたものは戻らない。時間も、戻らない。 だから聞いてください。その音を聞いてください。 あなたがこれからを生きるなら、どうかその音に耳を傾けてください。 きこえるでしょう? ねえ、きこえているんでしょう? あの音に刻まれた死の音が。 死んでから刻まれるその音は、生きている人に秘密を告白するみたいに囁いている。 僕にはきこえる。きこえている。 ねえ、きいてください。 僕も、あなたも、今ここにいるのなら。今ここに生きているのなら。 その音を知るべきだ。 ちっ ちっ ちっ ちっ ぽーん ちっ ちっ ちっ ちっ ぽーん ちっ ちっ。(ぴ) ちっ。(ぴ) ちっ。(ぴ) ぽーーーん ちっ ちっ ちっ ちっ ぽーん … … … あなたも、知るべきだ。 カチ、 カチ、 カチ、 カチ、 カチ、 カチ、 カチ、 カチ、 カチ、 カチ、 カチ、 カチ、 また、あのときを刻んだ時報が聞こえてくる。 また、時が時報に刻まれていく。 ねえ、キイテクダサイ。
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