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あれは魔法使いだけが集まる特別なパーティーだったと思う。
師匠は普段は猫背で、前髪をぼさぼさに伸ばしているけれど、公の場に出る時は別人のように完璧な着こなしをして参加する。
前髪をオールバックにすることで、紫色の双眸や目鼻立ちの整った顔立ちが目立つ。すらっとした背丈、正装として黒のモーニングコート姿を見た時は奇声をあげて、卒倒しそうになった。
(普段の師匠も優しくて、頼りになるけど──あんなに化けるなって聞いてないっ!!! イケメンすぎる。私の師匠カッコ良すぎる!)
そんな師匠の傍には蠱惑的な笑みを浮かべる魔女や、魅力的な魔法使いが多い。
……というか多すぎる。私もそれなりに頑張ってはいるが、彼女たちから見たら私は「おチビちゃん」か「お嬢ちゃん」といったところだろう。
師匠に女性として見られたい。そう思ったのは、私が十六歳の頃だ。
それから必死で努力をして、告白しても真に受け取られなかった。師匠にとって私は『実の子ども』に近いのかもしれない。いや、『妹』だろうか。
勉強をたくさんした。
師匠に褒められたくて、『師匠の弟子』だと自慢してほしくて。
師匠を独占したくて、面倒ごとにわざと首を突っ込んで。
毎回デコピンと説教だったけれど、構ってくれるのが嬉しくて、その後で淹れてくれたハチミツ入りのハーブティーがとても美味しくて、優しさに泣きそうになる。
師匠に「好きだ」と何度言っても、私の想いは届かない。異性としての好きを伝えたいのに。彼の中で私はどこまで行っても弟子のまま。異性として見てないことが悲しかった。
キッカケがあれば師匠の──イザヤの見る目が変わるかもしれない。
僅かな望みをかけて、私は今日も師匠のお茶に惚れ薬を混ぜる。
惚れ薬の効果が無い理由。
それを私が知るのはもう少し先で、師匠からイザヤと呼ぶようになってからの話。
「すでに惚れている場合は、効果はない」と、耳元で囁くのは卑怯だと思う。
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