どれみ姉は噂に微笑む

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✽✽✽  数日後。中学校から帰宅し、手洗い&うがい、第二に通知をチェック。……噂組がまたはしゃいでいる。何件のメッセージが届いているんだよ、これ。  星矢は数日間で、このメッセージ量に慣れてしまった。通知がピコンピコンと五月蝿(うるさ)いので、通知音はミュート済み。毎日毎日、うんざりとするレベルのメッセージが送信される。  退会してやろうか、と考えたけど……それこそ星矢自身が「噂」となり何か恐ろしいことが起きそうなので、やめた。噂なんて大抵がデマだろうけど。  こいつらは噂を利用してただ自慢話をしたり、「自分が注目されたい」という承認欲求を満たしたりしているだけなんだろうな。と、星矢はメンバーを軽蔑した。  すると、一件のメッセージが届く。それは星矢の興味をそそるモノだった。 「どれみ(ねえ)が子供を誘拐しているって噂があるらしい」  噂に対して「らしい」って……どれだけ信憑性ないんだよ、と疑問に感じたのはどうでも良い。それより内容の方が気になる。星矢はまだまだ慣れない手付きで返信する。 「子供を誘拐って?」  すぐに返信の返信が届く。 「どれみ姉……は大体のヤツが知っていると思う。で、今この辺りの子供が行方不明になる事件が多発しているだろ。実は、俺の親戚の小学生の子もそうなんだよ。まぁその子にはあんまり会わないけど……。その子を誘拐か何かしたのがどれみ姉じゃないか、って騒がれている」  こんな長文がよく一瞬で打てるものだ、という感想は置いておく。星矢はメッセージを見て、噂の中身をざっくりと理解した。  どれみ姉。星矢の自宅の近所に住んでいる、ミステリアスな女性。年齢不詳だが、見た目からは二十代だと推測している。不思議ちゃん、とでも呼べば良いのか。服装も語調もふわふわっとしている。  彼女の本名は「土合(どあい)玲美香(れみか)」。略して「どれみ」。親しく接してくれて、ここ周辺の中学生のお姉さん的存在だから、みんなから「どれみ姉」というニックネームで、愛されている。
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