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どれみ姉……子供が好きだとは喋っていたけど、いくらなんでも誘拐までするか? もしかしたらその子供を殺し……いやいや、あんなに人思いな姉さんがそんな事するはずない!
でも、真実はどうなのかは気になる。星矢の脳内は、疑問点やどれみ姉への信用がぐるぐると渦巻いていた。
噂を軽蔑してすみませんでした、やっぱり内容に興味あります、前言撤回。
どれみ姉を直接尋ねるのが手っ取り早いか? けれど、本当にどれみ姉が誘拐をしていたら……。
すると、どうしようかと迷っていた星矢へあっという間にチャンスが訪れた。
「星矢ー。回覧板渡してきてくれない?」
と、星矢の母親から持ち掛けられた。
「どこ?」
「土合さん家」
土合。土合、玲美香。どれみ。どれみ姉。ど、どれみ姉!?
「えっ……い、行く行く行く行く行くっ、絶対行くっっ!」
「え、どうした? 情緒不安定?」
と母親からはドン引きされたが、そんなことは気にしない。今、星矢はどれみ姉のことで頭がいっぱいだった。ヨシ、今すぐどれみ姉の自宅へ向かおう。と星矢は心の中で呟いた。
……やっぱり、おやつだけ食べてからにしよう。冷蔵庫から、ラップで覆われた皿に乗ったチーズケーキを取り出す。フォークで先端をすっ、とカットして口に運ぶ。
美味しい。チーズケーキがふわりと口の中で溶ける。とろり、と口内に余韻が広がる。星矢はこの余韻に浸っている時だけ、どれみ姉の噂を忘れる事ができた。
星矢はチーズケーキをペロリと平らげて、皿の上にフォークをカタリと置いた。そしてトートバッグにスマホと回覧板だけを入れて、行ってきますを言い忘れたのもお構いなしに自宅を飛び出した。
行き先は言うまでもなく、どれみ姉の家だっ!
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