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……どれみ姉の家は、星矢の自宅から徒歩1分。走る必要などゼロだが、感情に身を任せてつい全力疾走してしまった。こんなに走るのは、学校の体力テストで持久走を行う時か遅刻寸前の時だけであろう。
と、汗だくになりながら星矢は玄関先のチャイムを押した。ピンポーン、と音がする。……あれ、出て来ないな。どれみ姉不在か?
しばし待つ間、どれみ姉の家を見上げる。木造住宅の家。壁装は白く屋根はグレー。まぁ、家はともかく庭が物凄い。庭には雑草や謎の木が生い茂っている。空き家と勘違いされても納得できるレベルだ。
この庭の面積なら、別荘にあるようなプールがここにあってもおかしくないだろう。なのに手入れをしないなんて……どれだけ勿体ないことか。
庭には倉庫もある。これも使用されていないのか? 少し錆びついている。でも鍵が付いているから管理はしているはず。……多少は。
にしても、この庭……。何というか、違和感がある気がする。ん、しかもこれって……。
ガチャリ、と音がしたのもつかの間。誰かが星矢の眼の前に現れた。
「あ〜星矢くんだぁ〜。ごめんね〜待たせちゃって〜」
「ひぁりゃう゛ぇ゛ぃ!!??」
やべぇ、変な声を出してしまった。どれみ姉、居たのかよ……。星矢は顔がトマトより真っ赤になっていくことを感じつつ、自分自身にどんな声出しているんだよ、ったく! と叱りつけた。というか落ち着け、自分。こんな時こそ冷静に!
「あ、どれみ姉。回覧板……」
「ん〜。サンキュ〜。……あ、ついでと言ってはだけどお茶でもいかが? ささ、上がって上がって〜」
「え、あ、ありがとう」
断るのが苦手で大抵イエスマンとなる星矢は、今日も断れなかった。お茶でもいかが、って……。おやつにチーズケーキ食べたばかりなのだが。ま、お言葉に甘えて、と星矢はドアの先へとお邪魔することにした。
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