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すると突然。
「星矢くんごめんね〜。お目当てのモノがなかなか見つからなくって〜。失くしちゃったかと思った〜、良かった〜」
どれみ姉がドアをギィィィィ、と開けて戻ってきた。
「あ、どれみ姉。遅かったな……っ!?」
星矢はどれみ姉の手元をちらりと見た途端、さぁぁっと青ざめた。そしてガクガクと身体が震え始めた。思わず尻餅をつき、床を這いつくばるように壁際に逃げた。
どうして……どれみ姉がカッターナイフを所持しているんだ!?
パニック状態の脳内で、先程のどれみ姉の言葉が身体中を駆け巡る。さっきどれみ姉が話していた「作業」って、もしかして自分を……自分を……?!
「どっ……どれみ姉、どどどどうしたんだ、よ……」
「ん〜? 何がどうしたって〜。私はいつもの私だよ〜? ふふっ」
……あ、この人サイコパスだったんか、と星矢は察し、脱力感に襲われた。
一応、スマホはトートバッグの中で眠っている。でも、壁際から離れた丸テーブルに置いたトートバッグを取るとか……。それこそお疲れ様でした、ご臨終。となってしまう。
噂組の噂はデマなんかじゃなかった、ガチだった。自分も死んだら噂として噂組で出回るのかな、それ以前に事件として出回るかな。と最期の時にふさわしくないことばかりを考えてしまう。
まぁ逃げ場ゼロの状態でここから脱出できる訳ない、オワタ。やはり自分は、ここでこの世とサヨナラする運命なのか……。
せめて、あの羊羹だけ食えば良かった……と謎の後悔をしながら、どれみ姉に最期の質問をした。
「どれみ姉……そのカッターナイフって……」
「このカッターナイフ〜? そりゃあ〜……」
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