どれみ姉は噂に微笑む

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✽✽✽ 「あれ〜星矢くん、緑茶飲まなかったんだ……」  一人取り残されたどれみ姉は、透き通った緑茶を睨んだ。ま、飲むも飲まぬも星矢くん次第だから仕方がないよね、勿体ないけど。そう思いつつ、どれみ姉は星矢の発した言葉をふと呟いた。 「騙された! か……。ふふっ」  騙された! なんて酷いことを言うな〜星矢くんは。騙されたのは自分でしょう? 勝手に信実を決め付けて、都合が悪くなったら自分は騙されたんだ、と悲劇のヒロインぶるなんて……。やっぱり、人って面白い。  特に、子供は愛おしい。子供は無知で、無垢で、無恥。こんなに可愛らしい生物は、世界中を探索しても「人の子供」だけでしょうね。どれみ姉は妖艶さを漂わせながら、先程とは別人のような笑みを浮かべた。  さっき、「その男の子を誘拐、なんてするはずが無いよ〜」って言ったけど……その男の子は殺してないから、意味合いとしては間違ってないよね? その子は本当に行方不明なんだろうな、無事を願っておこう。  どれみ姉は、玄関ドアを開けて庭の倉庫へと向かった。周りをキョロキョロと見渡してから、鍵を開けて倉庫のドアをスライドした。  そこには、綺麗に保存された数人の子供の死体が入っていた。  どれみ姉は、星矢くんに死体がバレなくて良かったな〜と安堵した。もしかしたら死体の臭いに気が付いたかな、と不安だったがそんな必要は無用だった。だってこんなに可愛いお人形さん(・・・・・)なんだから、独り占めしていたいもの! 待っていてね、お裁縫頑張って君たちの「トモダチ」作ってあげるから。 「そしたら私と……ううん、どれみ姉と、おままごとしようね〜……」  どれみ姉は、「お人形さん」の一人をそっと抱き締め、頭をポンポンと優しく叩いた。噂に関しては、「勝手に騙された」星矢くんが掻き消してくれるから大丈夫でしょう。緑茶に睡眠薬混入していたのに、星矢くんが飲んでくれなかったのは計算外だったけど……結果オーライ。  いつでも来てね、って誘ったからまた「いつか」来てくれると思うし。その時まで、他のお人形さんを探そうかな……。星矢くんも阿呆で馬鹿で可愛いんだから、一刻も早くお人形さんの仲間入りすればいいのにな〜。  どれみ姉は、「お人形さん」をお姫様抱っこして、自宅という名のお城……いや、最早ドールハウスとも呼べるような場所に連れ込んだ。そしてどれみ姉も子供かのように、無邪気に微笑む。 「さぁ、どれみ姉と遊びましょう?」
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