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それはまるでプロポーズだった。新は自分が言った言葉に気付いていないみたいだけど。
「うん。楽しそう」
「良かった」
新はほっとしたのかチーズケーキを頬張った。
「それでさ、引っ越したばかりでなんだけど、もし二人で暮らす事になったら猫を飼おうか」
驚いてフォークを持ったまま固まる私に、新は優しく微笑んだ。
「もちろん、二人でアレルギー検査をしてからだよ」
猫に邪魔をされながら、二人で料理をする場面を思い浮かべる。
「何、ニヤニヤしてんだよ」
「楽しそうだと思っただけ。それに」
「何だよ」
「二人なら、美味しいご飯のレシピが増えそうだなって」
「今のところは味噌オンリーだけどな」
母から教わったレシピに加え、私の手作り味噌を使ったレシピが並んでいるその先に、もしかしたら醤油を使ったレシピが続くのかもしれない。
「醤油と来たら塩?」
新が飲んでいた紅茶を吹き出した。
「塩まで作る気か? というか、個人で作れるのかな」
「砂糖もいいよね」
新なら呆れながらも、結局付き合ってくれるだろう。きっと、飽きもせずに遊ぶ子供の目をして。私のレシピ作りは始まったばかりだ。
了
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