運命の出会い

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 母は味噌作り体験から帰って来た私と味噌を見て、「上出来、上出来」と喜んだ。私は家で相当暗い顔をしていたらしい。 「出来上がりが楽しみね」 「うん。どこに置いておくの?」  佐々木曰く、温度や湿度が安定している場所が良いらしい。 「クローゼットが良いかしら。いえ、こっちの方が」  母は嬉しそうに家の中をうろうろしていた。梅雨が明けて、夏が本格的になる頃には食べられる様になるらしい。 「夜ご飯、作るの手伝おうかな」 「あら、また料理する気になったのね」  料理を作ると、どうしてもシュウの事が思い出してしまう為にずっと避けていた。 「じゃあ、あなたの好きなハンバーグにしようか」  内心、ハンバーグと聞いてどきりとした。 「そうだ。お歳暮で頂いた美味しいトマトジュース使って、煮込みハンバーグもいいわね」  母は私の気持ちを知ってか知らずか、いそいそと箱からトマトジュースを取り出していた。 「いつものお母さんのデミグラスソースがいい」  母が一瞬、心配そうな表情をしてすぐに照れ笑いした。 「お母さんのって言うほどたいしたソースじゃないけどね」
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