運命の出会い

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 どこのスーパーマーケットでも手に入るトマトケチャップ、中濃ソースと、適量の砂糖と醤油、家にあればお酒かワインをフライパンで混ぜ合わせるだけだ。 「適当に混ぜときゃいいソースね」   私の言い方に母が苦笑する。 「最初はちゃんと計量していたんだけどね」  繰り返し作っているうちに自然と加減が分かってくるという。 「ふうん」 「これから何十年も料理するのよ? やっていれば嫌でも上手くなるもんよ。そうだ、ケーキ買って来たのよ。食べたら、買い物に付き合ってよ。そろそろサラダ油が無くなるの」 「うん、分かった。他に重いものあるなら私が持つよ。手が痛いんでしょ?」 「え? ああ、そうなの。困っちゃうわあ」  母が思い出した様に手首を触った。 「ねえ、お母さん。絵奈にレストランでアルバイトしないかって言われたんだけど、やってみても良いかな?」  母は嬉しそうに笑い、「良いじゃない。やってみたら」と言った。 「うん。やってみる」 「あっ。でも、帰りはあまり遅くならない様にしてよね」 「分かってるよ。ねえ、手首痛くないの?」  紅茶の缶を開けようとしている母が、顔をしかめた。 「いたたた」
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