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「私、人が多い所はちょっと苦手で」
とやんわりと断ったが、
「ちょっと良いなって思っている人がそのキャンプに参加するの。一人じゃ心細いし、琴音が一緒なら楽しいと思うんだ」と懇願され、思わず頷いてしまった。
「やった! きっと琴音にも良い出会いがあるよ」
絵奈はキラキラした目でそう言った。キャンプメンバーは一年から四年までの男女でこの時は二十名程の参加だった。
「初めて参加する人だよね? 見てるだけで大丈夫だよ」
何をしたら良いか分からない私や絵奈に声をかけて来たのが、この後付き合う事になるシュウだった。シュウは指示をするだけではなく率先してテントを張ったり、キャンプの道具や食材の搬入をしていた。話の中心にいつもいて、それでいて気配りができる人なのだと、彼に対して抱いた感情は実に好意的なものだった。自分には無いものを持っている人というのは、往々にして魅力的に感じるものだ。私は存在を意識しながら空いた皿を片付けたり、使った道具を洗ったりとなるべく悪目立ちしない様に他の参加者に紛れていた。
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