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「琴音が人見知りなのは知っているけど、気になった人とは積極的に話さないと」と、絵奈は私に忠告しつつ、好きな人の隣を死守していた。私だって人見知りを克服するチャンスかもしれないと、苦手なキャンプに参加した。だけど、この時はしつこく話しかけてくる三年生から逃げる事で精一杯だった。何のために来たんだろうとこっそり帰ってしまおうかと思案していると、シュウが声をかけてきた。
「ごめんね。あいつ、彼女にふられたばかりなんだ。許してやって。君がちょっと、その彼女に似てるんだ。えーと、名前なんだっけ?」
好人物を装う計算高い男だと、今の私なら警戒するだろう。
「また絡んでくるかもしれないから、俺の近くにいなよ」
この時、シュウにときめいてしまった自分はどうかしていたのだと思っている。
シュウは三年で、要領よく単位を取れる方法や課題の進め方を教えてくれた。それにいちいち感心する私に得意げに笑った。
「琴音ちゃんは、料理とかするの?」
こういう場の形式的な質問だと思った。
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