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「食にこだわりがある人なんだよ」
母はその頃から私の事を心配し始めていたらしい。それは、身近な友人達も同じだった。
「ねえ、本当に上手くいってるの? 王様と召使いって陰で噂されてるよ」と、絵奈がこっそり聞いてきた。
「何それ。ちゃんと仲良いよ」
私はそう言うしかなかった。そんな私へ追い討ちをかけるかの様に、
「シュウ君、強烈なマザコンらしいよ。散々、彼女に尽くさせておいて、理想と違ったらあっさり捨てるらしいよ。ねえ、本当に大丈夫なの?」と続けた。私は上手に否定出来なかったのは、母から教わった大事なレシピはいつの間にかシュウの母親の味に変わってしまっていたからだ。自分の作る料理が美味しいのか分からなくなっていた頃、唐突にシュウとの別れがやって来た。
「その地味な子、シュウ君の何?」
シュウのファンの一人が、シュウの腕に指を絡ませ甘えた声で私を指さした時、私の中で何かが爆発した。
「何って、恋人ですけど! あなたこそ、シュウから離れて下さい」
渾身の一撃のつもりだった。
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