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「何それ、笑える。シュウ君は私と付き合ってるんだよ? ね?」
シュウはファンの子に付き合っているとはっきりと言わなかった。ただ、熱く彼女を見つめた。それを、彼女は同意と受け取った様だ。
「琴音ちゃん。猶予をあげたのに全然、料理が上手くならないからさ。家にずっといるのに、料理出来ないなんてあり得ないよ」
シュウは呆れた顔をして去って行った。私に残ったのは、虚しさと半年以上かけて出来上がったシュウの大好きな母親のレシピだけだった。
「クソ野郎と別れられて良かったじゃない」
慰めてくれた絵奈には、しっかり恋人が出来ていた。それも、好きだと言っていたサークルの人ではなく、アルバイト先で知り合った人だという。
「サークルもやめた。変な人、多かったもんね」
私はまさにその変な男に痛い目に遭わされた。
「琴音もアルバイトとかしてみるのも良いかもよ」
「そんな気分じゃないよ」
「だからこそ、新しい事をやるんじゃない。友達がアルバイト探しているんだけど、やってみない? レストランの賄い、美味しいらしいよ」
「ありがとう。考えてみる」
口ではそう言ったが、新しい出会いなんて面倒なだけだと思っていた。
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