運命の出会い

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「きっと、楽しいから」  申し訳なさそうに湿布を貼った手首をさすった。キャンセルしたらとは言いづらく、すっかり暇になった私が参加する事になった。  年が明けて最初の土曜日、エプロンとタオルを持って会場の公民館へ母の電動自転車で向かった。私の自転車はマンションの駐輪場に置きっぱなしにしていたせいで錆だらけで乗れなくなっていた。 「歩くと距離あるわよ。私の商売道具貸してあげる」  訪問介護員で毎日忙しくしていた母の方が、私より充実して見えた。 「はあ」  自転車置き場にはチャイルドシート付きの電動自転車が多く、今日の参加者が子供連れが多いと知る。私は子供が苦手だった。スリッパをはき、中へ入ると良い匂いが漂っていた。 「味噌作り体験の方ですか?」  三角巾とエプロンをした三十代くらいの女性が部屋からひょこりと顔を出した。 「あっ、はい」 「部屋の中で受付しますので、こちらへどうぞ」 「分かりました」
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