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勘違いの恋
「せーの、オープン!」
厚手のジップロックの袋を開けると、熟成された味噌の良い香りがした。正月に仕込んだ手作り味噌はおよそ十ヶ月で食べ頃になる。九月の終わりに熟成具合を見ながら、味噌解禁したところだった。
「いい色」
スプーンですくって食べてみると、潰し残しの大豆の歯応えが少し残っていた。私は大豆のつぶつぶが残っている方が好きで、わざと少し大豆の形を残しておいた。自分の好みに出来るのが手作りの良いところだと思う。味噌作りを始めて四年になるが、少しその工程に慣れてきた。最初の手間を惜しまなければ美味しい味噌が楽しめる。
「何作ろう? 茄子味噌炒め、風呂吹き大根とか……」
私は元々、料理が得意ではなかった。その私がなぜ手作り味噌を作るようになったかというと、大学生だった頃に好きな人にこてんぱんにふられたからだ。
その彼と出会ったのは大学一年の頃、友人の絵奈が興奮気味に「五月の連休にアウトドアサークルが企画するキャンプがあるの。一緒に行かない?」と声をかけられたのがきっかけだった。
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