静かなる影に

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 夜道を歩く。  周りには誰もいない、自分だけがいる。  心が落ち着く。  我ながら、良い趣味だと思う。    月明りをしるべに、気ままに足を動かす。草や木すらも眠るとはよく言ったもので、自身の足音以外の物音は何一つしない。  今日は風すら吹いていない。あまりの静寂に、自分以外この世界からいなくなった錯覚すら感じる。  日の出ている内は、時々誰かとすれ違ったり、生物の気配を感じたりと落ち着かない。自然を直に感じられる夜の静寂が、誰にも邪魔されず物思いに耽ることが出来る。人や、生物すらいない孤独感が、日々の喧騒から別世界に行ったようでたまらない。この時間が一番好きだ。  軽いディストピアを味わいながら、気分が良くなり、思わず鼻歌を歌う。普段なら鼻歌など絶対歌わないのだが、人がいないのだからお構いなしだ。  曲がり角をスキップ気味に曲がり、ふと顔を上げる。 「……」  こんな時間まで起きてる物好きの、家主の電気を見てしまった。  嫌でも他に人がいることが分かってしまう象徴だ。  一気に現実に引き戻される。 「……はあ」  思わずため息をつく。萎えた気分を変えようと、街灯の明かりすらない暗い道へ引き返した。
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