余命数ヶ月の彼女は。

3/3
前へ
/3ページ
次へ
次の日の朝。 僕は少し早めに学校へ向かうことにした。 昨日傘を貸そうとしたこと。家まで送ったこと。人に親切にすることがこんなにも嬉しいことだなんてはじめて知った。 教室に入ると静かな教室ただ一人で、ただいつもどおり本を開く。 「おっはよ!」 その元気な声に僕は振り返る。あの子が今日も来た。 「驚いたでしょ?えへへっ、どうかな?」 そこにはいつもと違う彼女が立っていた。昨日までロングヘアだった彼女はボブで、照れているのか毛先をくるくると指で回す。 かわいい。 そう言いたかった。 「いいと思う。」 そう言って机に向かう僕が嫌になる。けれど彼女は嬉しそうに笑い、僕の横の席に座ってくる。 「何読んでるのー?」 「ファンタジー小説だよ。」 僕はゆっくりと彼女のほうを見た。その時僕は驚いた。近い。近すぎて鼻と鼻がぶつかってしまったのだ。 「ふふっ。照れてるでしょ。」 そう言われて本当に顔が赤くなった。それを隠すために反対方向を見る。 「べつに。」 そうは言ってもわかるのだろう。 こんな平和な日常が毎日。続くはず。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加