余命数ヶ月の彼女は。

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「あのね!この前かわいい服見つけたんだよ!リボンがついたシャツにね、ピンクの上着がかわいかったの!」 そう言って笑う女の子は数日前に隣の席になった人だ。彼女はおしゃべりで、明るくて。僕と話してくれるなんて思ってもいなかったけれど、誰にでも優しく平等に扱ってくれる彼女は隣の席になってその日に話しかけてくれた。 「私ね!あなたと話してみたかったの!」 そう。僕はクラスの誰とも話したことがなかった。誰とも。だから単純に嬉しかった。どうやら彼女とは帰りの電車が一緒みたいで、たまに出会うと一緒に帰ったことさえあった。それほど距離が縮まったのだ。 ある雨の日のことだった。 「うわぁ!雨すごいね。こんなんじゃ風邪引いちゃうよ〜!」 そう騒ぐ彼女に僕は傘を差し出す。 「よかったらこれ使って。」 「え、でも...」 「いいんだ。僕折りたたみ傘もっているから。」 嘘だ。この子が濡れてほしくなかったから。それをわかっていたのだろう。彼女は「じゃあ家まで送ってよ」と微笑んだ。その後「冗談冗談」と笑ったけれど、結局家まで送ってあげた。
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