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バリバリバリ、ボリッボリッ。
家族が寝静まった午前二時。
その夜の静寂に、耳障りな音が響く。
バリバリバリ、ボリッボリッ。
その音は、片時も途切れることなく続いている。
その音を発しているのは他でもない、私自身だった。
バリバリバリ、ボリッボリッ。
手が、かたわらに置かれた袋に伸びる。
スナック菓子を摘んだ指が、口元へと運ばれる。
そう、耳障りな音の正体は、菓子を噛み砕く咀嚼音だった。
バリバリバリ、ボリッボリッ。
味など、関係ない。
硬いものが噛み砕かれていく、その感覚がこれ以上なく心地よい。
そして、深夜にカロリーの高い食べ物を口にするという、えも言われぬ背徳感に酔っているのだ。
バリバリバリ、ボリッボリッ。
もちろんのこと、身体に良いはずがない。
体重は、この良からぬ行動が習慣化してから十キロ以上増えてしまった。
けれど、どうしてもやめることができなかった。
バリバリバリ、ボリッボリッ。
油で汚れた指先を、ティッシュペーパーで拭う。
なぜだろう、涙がこぼれ落ちてきた。
意志の弱い自分に対する情けなさへ向けられたものなのだろうか。
それとも、やってはいけないことをしてしまっている罪悪感からくるものなのか。
わからないまま、涙が頬を濡らす。
バリバリバリ、ボリッボリッ。
今日もまた静けさの中、耳障りな音がいつまでも響いていた。
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