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──世界が、終わっちゃう。
13年前、とある国の予知能力者がそう予言したらしい。
始めは誰も、特に先進国の人々は信じていなかった。ある者は予言を笑い飛ばし、ある者は予知能力者を蔑んだ。
しかし、予言が出た丁度3か月後。世界に明らかな異常が起こった。
北極が、時を止めたのだ。
その様子は世界中に報道され、人々の混乱を招いた。
幼いわたしも、テレビで見たときは思わず目を疑った。アナウンサーの落ち着きのない実況も耳に入らないまま、画面を凝視していた。
大きなホッキョクグマが、ピクリとも動いていなかった。海が、全く波打っていなかった。吹雪が、宙に留まったままだった。それらは、まるで写真のように静かに止まっていた。
それを目にした人々は、当然恐怖し、絶望した。もう、誰も予言を疑う者はいなかった。
世界中の国々はすぐに緊急会議を開き、協定を結んだ。何とか世界の終わりを食い止めようと、世界中の学者たちが研究を始めた。
そして、とうとうある学者が大きな発見をして、画期的な方法を見いだす。
『時エネルギーの変換』
それが学者の発明で、世界が行った対処法だった。
曰く、この世には全てのものに時エネルギーというものが内包されていて、そのエネルギーを消費することが時を刻むことだという。その時エネルギーを人々から集め、変換して世界の時エネルギーとすることで、世界の時間を増やすということらしい。
他に方法が無かったため、世界中の人々は早急に行動を始めた。天才たちが集って発明を行い、理論も完璧にし、実験も成功させた。しかし、ここで大きな問題が発生する。
ほとんどの人が、自分の“時”を差し出さなかったのだ。それはそうだろう。世界のためとはいえ、誰が進んで大事な自分の時間を寄付するだろうか。集まった時エネルギーはそれは微量なものだった。
そこで世界中で始まった制度が、『世界一律時エネルギー通貨化制度』簡単に言うと、「時は金なり」ということわざをそのままの意味で行うということだ。
物を買うためには、お金の代わりに時エネルギーが対価となる。つまり、生活するためには、自分の時エネルギーを世界に渡さないといけなくなった。
流石に家や車など、高価な物は今までのまま金銭で売買したが、生活必需品などはそのほとんどを時エネルギーでの売買となった。
そして今。
この生活もすっかり馴染み、ほとんどの人々が自分の“時”を無くすことにも慣れた。
世界の混乱もなりを潜め、誰もが上手く時間をやりくりしている。世界はいつの間にか、元のような平穏な“時”を取り戻していた。
みんな、いくつかの犠牲には気付かずに。
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