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「私の分まで生きて」
そう言った彼女のためにどうにか心を奮い立たせここまで生きたが、もう十分だろう。
これ以上、彼女のいない世界で生きていたくなどない。
死のう。
そう思った。死に場所を探すため旅に出よう。アナとの思い出のありすぎるこの家を出て、たった一人で死んでいこう。
アナの望みを叶えられない自分へのそれが罰だ。
そして、ロロは身支度を済ませ、たった一つ、アナのくれたハンチング帽だけを被り旅支度を終えた。
もうここに戻って来ることはない。思い残すものなどない。だって、自分はこれから行きたい場所へ行くのだから。そのための旅なのだから。
外に出る。空は青く澄んだ空が広がっている。旅日和だ。ロロの旅だちを祝福してくれているかのよう。
この世界にロロを必要としている人はもういない。ずっと一人で生きてきたのだ。アナだけがロロを愛し求めてくれていた。そのアナはいない。だから、ロロがどこで死のうと、きっと何事もなく世界は進んでいく。
「ロロ!」
歩き出したロロを呼ぶ声。ロロは足を止めその声の方へとぼんやりと視線を向ける。
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