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ぽろりと言葉を零した。ロイは黙ったままこちらを見ている。
「俺が、もっとあいつの力になってやれていたら、そしたら、あいつは」
溢れてくる悲しみをただ口から垂れ流した。
「俺は何もしてやれなかったんです。あいつのために、何もしてやれなかったんです」
悔しくて仕方なかった。だが、いくら後悔を零してももうデクスターが戻ってくることはない。
「そんなことはない、お前は」
ロイがそこで言葉を切った。
「俺は、俺は、何もできない、身勝手で役に立たない人間です」
そう言ったとき、ロイが自分の肩に手を置いた。
「ヴァン、これだけは覚えておけ」
泣きながらロイの方に顔をやった。
「今の厳罰化社会は、言い換えれば少しでも危険な人間、脛に傷がある人間を徹底的に排除する社会だ。だが、実のところ、危険な人間をひたすらに取り除くなんてことは、大して難しいことじゃない。誰でもできることだ」
そこまで言うと、ロイはスラックスのポケットから煙草を取り出して火を付けた。
「でも、お前は違った」
ロイが煙草の煙を吐き出した。
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