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そう言うと彼は島の一番奥右側の席まで歩いていき、ナイロン製の幅広い黒い鞄をデスクに置いた。その瞬間、ロイと呼ばれた男と目が合った。
「もしかして、ヴァン君?」
先に口を開いたのはロイだった。
「はい、この度、バギーレイク署防犯課地域係から異動してまいりましたヴァン・クレイグと申します、よろしくお願いいたします」
夢中で頭を下げた。
「やっぱりそうか、俺はロイ・シーウェル、たぶんこれから君とバディを組むことになるから、よろしくな」
爽やかな言葉と共にロイはデスク越しに手を差し出してきた。
「はい、よろしくお願いします、シーウェルさん」
慌てて彼の手を握ると、自分の手が小刻みに揺らされた。
「よろしく、俺のことはロイでいいよ」
彼は少しはにかんだような表情でそう言った。
爽やかで感じがいい、としかいいようがなかった。プライドの高さや嫌味ったらしさなどは微塵も感じさせない。よく、警察官の仕事を続けていながら、こんな爽やかであり続けられるものだ、と感心させられた。
「はい、じゃあ、ロイさん、と呼ばせていただきます」
恐縮しながらそう言うと、ロイは軽く口角を緩めた。
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