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 特殊な能力、その言葉で心が躍った。この国の警察官は皆、超能力ともいうべき特殊な能力を身に着けている。それは誰もが知っており、それに憧れて警察官を目指す者も少なくない。かくいう自分もその一人だった。特殊な能力を身に着けて犯罪者と対峙する、そんな警察官の姿に憧れて州司法職員第一種試験を受けたのだ。 「我が国は昨今、警察官の人員不足に悩まされており、警察官一人一人の捜査能力と制圧能力の拡張が急務とされている」  教官が話し始めた。誰もがじっと教官の言葉に耳を傾けている。  概ね知っている話ではあった。自分が住んでいるこの国は、経済格差の拡大のせいで、犯罪が増えており、治安は悪化の一途を辿っていた。一方で、警察官の過酷な仕事は多くの若者から敬遠されており、なり手がいない。さらに急速な少子高齢化の進行が警察官の絶対的な不足に拍車をかけていた。  その状況に対処するために、警察官に特殊な能力を持たせて捜査能力や制圧力を高めるという画期的な方針が出されたのが、今から二十年以上前のことだ。
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