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制服警官の一人が自分をじっと睨みながら、そう言った。
「本日付けで刑事課強行犯係に配属になりました、ヴァン・クレイグと申します」
自信満々にそう言い、首から下げた黒革の身分証鑑札をジャケットの内ポケットから出して開いた。身分証鑑札の一枚目には国の徽章が刻まれ、二枚目に自分の顔写真が印字されている。
制服警官は印刷されている写真と自分の顔を見比べるようにこちらと身分証鑑札の間で視線を行き来させた。
「失礼いたしました、どうぞ」
彼は懸念を払拭したらしく、納得したような表情で自分に敬礼をした。姿勢を正して敬礼を返し、そのまま自動扉をくぐった。
ブラスポート警察署の中は外見と違わず古臭かった。灰色のリノリウムの床が続いており、グレーセメントの壁には犯罪防止週間の啓発ポスターが貼られている。壁際には背もたれがない焦げ茶色のソファーと鉢植えの観葉植物が置かれていた。
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