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その先にはカウンターがあり、そこには制服を着た中年の婦警が座っていた。やることに追われているらしく、せわしなくカウンターの下で手を動かしている。彼女が座っているカウンターの上の天井からは、遺失物係、という白い表示板がぶら下がっていた。
何階に刑事課があるのかは聞かされていなかった。あたりを見渡したが、茶色い手すりがある階段とワインレッドの扉のエレベーターが廊下の奥に見えるだけだ。
仕方ない、そう思って遺失物係のカウンターに近づいた。
「あの、刑事課は何階でしょうか?」
カウンターに座っていた中年女性に尋ねた。訝しむような目つきが返ってくる。
「三階ですが、何か?」
話が通っていないことが丸わかりの態度だった。当然と言えば当然だ。刑事課長なら自分のことは知っているだろうが、遺失物係の人間が刑事課に異動してくる人間の顔など知っている訳もない。
「この度、刑事課強行犯係に配属されましたヴァン・クレイグと申します」
胸を張ってそう言った。中年女性の黒い瞳がぱっと見開かれ、いかにも興味津々といった表情に変わる。
「あら、そうなの、まだ若いのに優秀なのね」
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