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 その島が部屋の中に五つあった。部屋の奥の壁には窓があり、約三メートル間隔で区切られた窓にはいずれもブラインドが降りている。  呆気ない始まりだ。それしか感想が湧かなかった。歓迎されると思っていたわけではない。それでも自分の刑事人生の始まりがこれほど無味乾燥だとは思っていなかった。  自分の正面の島の一番手前左側のデスクには一人の女性がいた。しかし、明らかに意識はなさそうだった。デスクに突っ伏して眠っていたからだ。栗色のセミロングはデスクにべったりとついており、その背中には黒のジャケットがかかっている。  誰かに自分がここに来たことを知らせたい、そう思って女性に近づいて覗き込んだ。顔は窓の方を向いているせいで見えないが、頬の下にある白いワイシャツの腕には剥がれたチークの跡が僅かに残っている。  これほど気持ちよさそうに眠っている人を起こすべきか、そんなことを僅かに逡巡(しゅんじゅん)した。今は八時二十二分、少しの間待っていれば他の人が来るだろう。それまではこの名前も知らない女性を放っておくべきかもしれない。そこまで考え至ったときだった。 「ん」
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