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クラス中がくすくすと忍び笑いをはじめる中、僕は音のしたほうに視線を動かした。
僕は最初、音の主を詮索するなんて野暮なことをするつもりは毛頭なかった。が、どうやら盛大な空腹の訴えをしているのは、僕の近くにいるらしい。気にするな、というほうが無理な話だった。
となりの席にいるクラスメイトの女子、百瀬小春のようすがあきらかにおかしい。英単語でも覚えていたのだろう。片手サイズの単語帳を持つ手の動きをとめ、固まっている。
大きく見開かれた瞳、じょじょに赤くなる顔がすべてを物語っていた。
ぐぎょぐぐぐぐるるるるう。
リスのような小柄な見た目から発せられるとは思えない、ものすごい音が教室を震わせた。静かな空間ゆえに、普段より異常に目立つ。
お腹の音というのは、嫌なもので意識しないようにすればするほど、その存在感を示すかのように鳴る。
ぐううううおおおお。
と、彼女の目と僕の視線があった。すぐさま彼女は前に向き直したが、もうその顔は今にも泣きだしそうなほどだ。
なんだか見ていられなくなった。
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