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「もう、そんなんじゃないんだってば。たぶん、私がシュウさんに感じているのは……シャカイジンに対するアコガレってやつ? きっとそれだよ」  進路が決まらずに漠然と大学と学部を決めちゃった私には、スーツを着て働いている人たちを、みんなすごいと思っている。理系男子で、コンビニ裏の数列のナゾをパッと解いちゃうシュウさんのことは、なおさらだ。 「そうっすかねえ? コンビニ(うち)に来るようなくたびれたシャカイジンを見ても、同じような反応にはならないっしょ」 「じゃあもしくは、雑誌で見ていた綺麗なアイドルやモデルが急に目の前に現れてアワアワしちゃうあの感じ……?」 「いやだってもう、美澄さんのあのお客さん対する反応……付き合う前に俺の彼女が俺にしてた反応とそっくりっすよ?」  タバコを補充する手が、ふと止まる。 「……それってつまり?」  す……好きってこと? シュウさんのことが? 「い、いやいやいやぁ……」  だって、シュウさんと会ったのだってコンビニのレジ以外だと、数列のナゾを解いた時しかないですよ? 文化祭だって、コンビニの常連だった美術部員四人組と関係があるから、言ってみようって話だったし。  もちろん、文化祭を一緒に回るのは嬉しいし、手を繋いだりしたいなあって思うことも、ないわけじゃないような気もしなくもないっていうか……。  ──すると、私の脳内が半自動的に、彼と繋いだ手の感触や温度を生々しく妄想してしまって、頬がカッと火照った。  確かに、『一目惚れ』って言葉があるくらいだし。  シュウさんとちょっとしか会ってないからって、恋をしない理由には、ならないけれど。 「ど、どうしよう」  佐野くんの言葉がきっかけで、『シュウさんと文化祭に行く』っていうイベントが、私の心の中で変に意識したものに変わっていく。 「私、とんでもない約束しちゃったかも……」 「いいじゃないすか!」  佐野くんは他人事だからって、私の顔を見て面白がった。 「デート、楽しんでくださいっす!」 「……で、デー、ト?」  よく考えたら確かにこれ、まるきりデートじゃないですか!!!  いやぁああ! どうしよう!?
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